も・の・が・た・り

御覧いただきありがとうございます!大学一年生で読んだ本の感想や好きなアニメやゲームの考察なんかをやっています。

蜜蜂と遠雷 第二予選 曲一覧

 

高島明石

春と修羅

夜の海に打ち寄せる波。頭上に輝く星。歩いている、明石は波打ち際を歩いている。森羅万象。それは、賢治の森羅万象でもあり、我々の森羅万象でもある。すべては巡り、すべては還っていく。我々がここに存在するのは、ほんのひととき。宇宙の輝きですらない、とても短い時間。修験者が握っている錫杖の音のように、繰り返し繰り返し、荘らの彼方から響いてくる。やがて声は消えてゆく。曲は最後に向かって尾後坂に進む

、すべては移りゆき、時のしじまに消えた、循環は繰り返される。

 

ショパンエチュード Op.10-5 黒鍵」

軽やかなみずみずしい黒鍵のエチュード。茶目っ気もあって楽しそうに弾いてるな。


黒鍵のエチュード/Etude Op10-5/ショパン/Chopin/ピアノ/Piano/CANACANA

 

リスト「パガニーニの大練習曲 S.141 第六曲 主題と変奏」

遊泳なテーマ曲を縦横に展開した、メリハリのある華やかな曲。ゆったりと、それでいてきちんと締めるところは締め、序破急とでもいうのか、曲の作りに無駄がなくバランスがいい。


リスト/パガニーニによる大練習曲集 S.141より 第6曲 イ短調「主題と変奏」 | 卒業演奏会2015

 

シューマンアラベスク ハ長調 Op.18」

シンプルなだけに、ごまかしがきかない。大好きな曲だけれど、いつも弾くたびに発見があるし、弾けば弾くほど難しい曲だと思う。


R.シューマン / アラベスク ハ長調 op.18

 

ストラヴィンスキー「ペトリューシュカからの第三楽章」

思い切り華やかな導入だ。ぱっきりと金の音のように、硬質な音を響かせよう。グリッサンドは、鋭くそれでいてなめらかに。色彩豊かでトリッキーに。きらびやかな音が響き渡る。トレモロを、和音を、ともに呼吸する。ラストまで一直線に天へ駆け上っていく、激しい和音が加速し、宴は怒涛のような幕切れへとなだれこむ。


ストラヴィンスキー: ペトルーシュカからの3楽章:第3楽章「謝肉祭」[ナクソス・クラシック・キュレーション #ファンタジー]

 

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

 

春と修羅

シンプルでナチュラル。闇がー宇宙が見える。昏い星々がー寄る辺なく、どこまでも虚空が、マサルの背後に。その映像ひとつひとつが独創的で情感に満ちていて、説得力がる。オクターヴでのパッセージと、複雑な和音を駆使した超絶技巧のカデンツァ。昏い星々の間から射してきた一筋の光。その光の中に垣間見えた無限の色彩。

 

ラフマニノフ「絵画的練習曲音の絵 Op.39-6 アレグロ

闇の底で何かがうごめくような、低く、不穏な始まり、徐々に動きが起こり、緊張感のあるトレモロが闇を穿つ。


ラフマニノフ/エチュード「音の絵」より第6番Op.39-6/演奏:鈴木 弘尚

 

ドビュッシー「十二の練習曲 第五曲 オクターヴのための」

深い闇を感じさせた一曲目から、二曲目で徐々に明るく、開けたところへでていくような雰囲気を出している。そして三曲目のドビュッシーで一気に開けたところへ∂。マサルの持つダイナミックさが、ドビュッシーの曲の独特なスケール感とあいまって、感動的なまでに表現される。


ドビュッシー 12の練習曲より第5曲:オクターブのために / Debussy Pour les octaves

 

ブラームスパガニーニの主題による変奏曲 Op.35」

さらに、ギアチェンジがなされたまま、最終局へ。「満を持して」堂々と提示され、ぐいぐいと観客を引っ張っていく。


ブラームス/パガニーニの主題による変奏曲,Op.35/演奏:太田実花

 

風間塵

ドビュッシー「十二の練習曲・第一巻第一番 五本の指のための/ツェルニー死氏に倣って」

ピアノを始めたばかりの子どもを連想させる、たどたどしい茶目っ気のあるフレーズから始まる。しかし、「ピアノのお稽古」は徐々に堂々たる「ピアノ演奏」となって締めくくられる。鮮やか。ドビュッシーの色彩が匂い立つ。


ドビュッシー 12の練習曲より第5曲:オクターブのために / Debussy Pour les octaves

 

バルトーク「ミクロコスモス第六感より 六つのブルガリア舞曲」

どことなく土俗的な雰囲気の漂う、ジャズっぽい気まぐれなメロディも彼によく似合う。野性的というか、動物的というのかー都外で子供が駆け回っているような演奏。


バルトーク/ミクロコスモス第6巻 146.オスティナート/演奏:本山麻優子

 

春と修羅

ごく静かに始まった。曲も至ってシンプルに展開される。日常生活。しかし、そのイメージはカデンツァに突入したとたん、一瞬にして打ち砕かれた。風間塵の紡ぎだしたカデンツァは、すこぶる不条理なまでに残虐で、凶暴性を帯びていたのである。「修羅」なのだ。人間には到底太刀打ちできない自然の猛威。美しい自然だけではなく「修羅」あっての「春と修羅」なのだ。

 

リスト「二つの伝説より 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ

緊張は途切れず、流れるように次の曲へと進んでいく。風間塵の指から生み出される延々とるづくトリルとトレモロを聴いていると、ちらちらと上下しながら宙をはばたく小鳥がぼろをまとった青年と荒野で向き合っている姿が目に浮かんでくる。


リスト 「二つの伝説」 第1曲 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ ピアノ 小松勉

 

ショパンスケルツォ第三番嬰ハ短調

これまた、煽情的なショパン。イタリア語で「冗談」とか「いたずら」の意味を持つスケルツォだが、風間塵のスケルツォは飛び切りトリッキーだった。南路楽しそうに弾くのだろう。彼の演奏を聴いていると、無性に自分もピアノが弾きたくなる。目の覚めるような幕切れ。


ショパン:スケルツォ 第3番嬰ハ短調 作品39 - 藤波結花

 

栄伝亜夜 

 

ラフマニノフ「絵画的練習曲音の絵Op.39-5 アパッショナート変ホ短調

彼女は風間塵の演奏さえも前提にしてしまい、それを「踏まえて」城を築こうとしている。一音一音にぎっしりと哲学や世界観のようなものが詰め込まれ、なおかつみずみずしい。


ラフマニノフ エチュード「音の絵」Op.39-5

 

リスト「超絶技巧練習曲 第五曲 鬼火」

一曲目が終わっても、亜夜の集中力は途切れることなく、目を閉じたまま沈黙があり、すぐに二曲目に入った。一曲目がダイナミックに展開される曲だったため、こちらは対照的に、とてつもなく繊細だ。


リスト/超絶技巧練習曲 第5番鬼火,S.139,R.2b/演奏:福間洸太朗

 

春と修羅

ふっと炎が消えた。部隊は消え、目の前に、さえざえとした闇が広がる。ちょっと物悲しく、それでいておどけたメロディ。カデンツァが近づいてくる。自由に、宇宙を感じて。骨太でゆったりとしたーおおらかな、どっしりとしたーすべてを包み込むようなまるで大地のようなカデンツァ。亜夜は、あの凄まじい「修羅」に満ちたカデンツァを聞いて、それに応えた。

 

ラヴェルソナチネ

どこか古風な響きのする三楽章からなる曲を丁寧言弾いていく。


ラヴェル:《ソナチネ》アルゲリッチ 1974

 

メンデルスゾーン「厳格なる変奏曲」

静かに始まり、さざなみが寄せては返す。やがて波は高まり、奉公する、繰り返されるテーマ。激しいパッセージはラストに向かってクライマックスを迎える。二次予選の締めくくり。なんというみごとなフィナーレだろう。


加藤大樹 Daiki Kato Mendelssohn/Variations serieuses op.54