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祝!映画化! 蜜蜂と遠雷 恩田陸 紹介

いよいよ、2019年10月4日に映画「蜜蜂と遠雷」が上映になります!!

 

そんな超大作「蜜蜂と遠雷」を映画をきっかけに知った人も多いと思います。そんな人たちのために「蜜蜂と遠雷」(原作)の魅力をご紹介できればと思います!!

 

原作ファンの人たちもぜひこの記事を読んだ後、もういちど、読み直してあの感動を再び味わってください!!

 

 

蜜蜂と遠雷 表紙画像

 

 

あらすじ

芳ヶ江国際ピアノコンクールは、優勝者が後に著名コンクールで優勝することが続き近年評価が高い。そんなピアノコンクールに挑む4人の若きコンテスタントの苦悩と葛藤、感動と成長を描いた青春群像小説。

 

登場人物

風間塵(かざまじん)

音楽大学出身でなく、演奏歴やコンテストも経験がなく、自宅にピアノすらない少年。ピアノの大家のホフマンに見いだされ師事し、彼が亡くなる前の計らいでこの度の芳ヶ江国際ピアノコンクールへのオーディションへ参加した、謎の多い野性的な天才少年。

 

栄伝亜夜(えいでんあや)

天才少女として5歳で数年間コンサートを開きCDデビューをするほどの活躍を見せていたが、13歳のときマネジャーとしても亜夜を支えてきた母が突然亡くなる。そのショックでピアノが弾けなくなり、次のコンサートを直前に中止し、そのまま音楽界から離れた。しかし、音楽大学の浜崎学長に見いだされ、同大学に入学。今回のコンクール参加を決める。

 

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

多くが才能を認める天才で、日系三世のペルー人の母とフランス人の貴族の血筋の父を持つ。期待の優勝候補。天才的なピアノの腕前と高いカリスマ性で聴衆を魅了し、高身長の貴公子然として「ジュリアードの王子様」と呼ばれる。

 

高島明石(たかしまあかし)

音楽大学出身でかつては国内有数のコンクールで5位の実績。卒業後は音楽界には進まず、現在は楽器店勤務のサラリーマンで妻娘がいる。音楽界の専業者だけではない生活者の音楽がを示したいという強い思いで、自身最後のコンクールに応募した。

 

作品の魅力

  1. 著者恩田陸さんの執筆に懸ける思いがすごい!
  2. 文章から音楽が聴こえてくるような美しく、巧みで多彩な音楽描写!!
  3. 各コンテスタントの苦悩や葛藤、コンクールを通しての成長に感動!!!

 

著者恩田陸さんの執筆に懸ける思いがすごい!

この作品は第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞ダブル受賞作というすばらしい評価を受ける超傑作となっています。

 

それもそのはず、3年に1回、開催される浜松国際ピアノコンクールへ2006年第6回から2015年第9回まで、途中からは執筆に並行して、4度も取材。毎日、会場の座席で午前9時から夕方までピアノ演奏を聴き続け、構想から12年、取材11年、執筆7年という渾身の作品での受賞となっているからです。

 

また、直木賞本屋大賞のダブル受賞及び同作家2度目の本屋大賞受賞は、史上初の快挙なのです!

 

 「才能とは何か」をテーマにして、若き演奏家がコンクールという厳しい現実に押しつぶされそうになりながらも成長して、ピアノに向かい続ける姿を恩田陸さんの得意な郷愁を誘う情景描写に巧みを交えて描き切っています。

 

文章から音楽が聴こえてくるような美しく、巧みで多彩な音楽描写!!

私が思うこの作品の素晴らしいところは何といっても、音楽とコンテスタントの心情が感じられるような巧みな音楽描写と情景描写にあります。

 

これは、実際に読んでもらう方がいいでしょう

 

バルトーク「ピアノ・ソナタ Sz.80」

いきなり、不穏で激しい音の連打で始まり、聴衆を異世界へと引きずりこむ。モダンで前衛的なところのあるこの曲からはいり、どちらかといえば甘いイメージのあるマサルの印象を覆し、ハッとさせるためだ。バルトークは生前、ピアノは旋律楽器であると同時に打楽器である、と繰り返し述べている。マサルは、マリンバ独特のリズミカルな弾力間、軽やかな疾走感を再現しようと試みる。バルトーク独特の音の展開。胸をすくような、潔い音の流れは、どこか見晴らしの良いところに出た、パット広い青空が開けたような爽快感がある。

 

ドビュッシー「版画」

たちまち情景が変わる。「版画」の一曲目。「塔」。くすんだ色の、黄昏の集落。ねっとりとした、亜熱帯の味なの湿気。草のにおいや、熱風のにおいまで漂ってきそうな光景。古びた塔。情動、とでも呼ぶのだろうか。心の底の、普段は深く暗い場所に湛えられた水が、目に見えない力に揺さぶられ、ゆっくりとうねる。

 

そのまま、「版画」の二曲目「グラナダの夕べ」へと移行する。いつのまにかイスラムのにおいのする世界へと運ばれる。ハバネラのリズム。黒髪の女たち。扇を手に舞う女たち。これまた、身体の底にある情動の海から、たぶんと何かが首をもたげる。やるせない、遅い午後。何か大きなエネルギーの壁のようなものが舞台からせり出していて、文字通り座席に縫い付けられたように動けないのだ。喉はカラカラで、呼吸すら憚られる。

 

いかがだったでしょうか。これはあくまでも抜粋であり、実際に読んでみるとピアノの技巧的な部分の描写だけでなく、その曲から浮かぶ情景を鮮やかに描写したり、作曲者の思いを書くことで、その曲に込められた感情を描写したり、コンテスタントの心情、観客の気持ちの移り変わり、興奮や感動を繊細に描いているので、まるで、自分が観客としてホールにいて曲を聴いているかのような気持ちになります。

 

また、私はクラシック音楽に疎いどころか音楽知識もありませんでしたが、作者の言葉の豊かさのおかげで一気読みでした。また、同時にYoutubeの曲を聴きながら読むことで、実際の曲と言葉による表現が見事に再現されていて、このようにゆっくり読むこともおすすめです。

 

良ければ私の別記事で、予選ごとに曲をまとめてみましたので、実際の曲を聴きながら、読んでみてはいかがでしょうか。

 

strix-zero.hatenablog.com

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各コンテスタントの苦悩や葛藤、コンクールを通しての成長に感動!!!

この作品の魅力はただ、素晴らしい演奏を観客として聞いているかのように感じられるところだけではありません。コンテスタントがコンクールを通して、演奏家としてだけでなく人間としても成長していく姿が描かれていて、そのドラマに感動するところも大きな魅力の一つなのです。

 

特に、栄伝亜夜と高島明石にはこれまでのバッググラウンドが壮絶なものであるのでコンクールについても深い思い入れがあります。

 

人物紹介でも書きましたが、栄伝亜夜は過去の天才として見られていました。そのため、コンクールに参加する前までは、また失敗してしまうのではないだろうか、周りの人からはどう見られているのだろうか、といった苦悩があり葛藤を抱える。その中で、様々なコンテスタントの演奏を聴き、予選を勝ち抜いていく中で自分なりの演奏とは何なのか、自分のやりたい音楽とは何かということを追求し始めるようになっていきます。

 

また、高島明石は決して天才と呼ばれるような人物ではありません。実際に社会で働き、家庭を持ちながらコンクールに参加することを選びます。そんな、いわば努力の人が天才たちが集まる国際コンクールで勝ち抜くために、演奏技術、曲目の構成、曲に込める思いを手探りで地道に探し、時には、自分の限界を感じて諦めそうになりながらも常に自分のベストを尽くす姿には、教官と感動を覚えます。(特に一次予選の演奏シーンは泣けます)

 

それ以外にも、マサルや、風間塵が音楽に懸ける思いだったり、詳しい商会はないもののこのコンクールに人生をかけて挑むほかのコンテスタントの演奏も必見です!!

 

それぞれの個性あふれる演奏に引き込まれること間違いなし!

 

読了後は実際にコンクールを最初から最後まで聞き続けていたような、達成感と爽快感に包まれます。

 

おわりに

どうだったでしょうか?

つたない文章だったため、これでも魅力の3割くらいしか伝えられていないかもしれません。

 

ぜひ、本を読んで、自分の目でお楽しみください。

きっと、素晴らしい体験ができると思います。

 

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷